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白麹って何?魅惑の麹菌に迫る!

2020/11/06

最終更新日:2021/11/01

今回は日本酒ラバーな人には聞き馴染みがあるであろう「白麹」についてのお話。
知らない方に簡単に説明すると、「白麹」はもともと焼酎で使われていた酸っぱい麹で、最近は日本酒にも使われ爽やかな酸を演出するのに一役買っている期待の新星!というような麹なのです。

麹

黄、黒、白。3色の麹

日本酒や焼酎などの酒造に用いられる麹はだいたい3種類で、「黄麹」「黒麹」「白麹」と色の名前がついています。

黄麹は学名を「Aspergillus.oryzae」といい、日本酒の醸造や味噌醤油つくりなどにも幅広く用いられている日本の国菌です。日本の発酵食品に欠かせない甘味や旨味を生成してくれる我らがスーパースター!

黒麹は学名を「Aspergillus.luchuensis」といい、もともと泡盛造りで使われていました
見た目はその名の通り真っ黒。ちょっと見た目は怖い…。
明治の終わりまでは焼酎も前述の黄麹を使っていましたが、温暖な地域で造るのもあり、うまく発酵せず腐造になってしまうこともありました。
そこで、鹿児島県で焼酎の製造指導をしていた河内源一郎先生が、鹿児島よりもさらに暑い沖縄で造られている泡盛について研究していたところ、黒麹菌を分離するにいたりました。

黒麹菌はクエン酸を分泌します。
基本的に多くの菌は酸性状況下に弱いのですが、酵母はその影響を受けづらい性質を持っています。そのため余計な菌を寄せ付けず、酵母のみを活動させることが可能となり、安全な焼酎造りの幕開けを迎えました。
ちなみに、麹造りの際は他の微生物に対するガードがないため、得てして様々な菌も混入してしまいがちなのですが、黒麹はクエン酸を分泌するため雑菌の混入が少なく、微生物汚染が起こりにくいのも特徴です。

黒麹

三軒茶屋醸造所でつくりあげた黒麹。

さて、やっと白麹ですね。学名は「Aspergillus. kawachii」といい、黒麹菌の突然変異から誕生した麹菌なのです。
黒麹菌を分離した河内源一郎先生が、味わいもクセがなく製麴も行いやすい焼酎造りにむけて研究を続けた結果、黒麹の胞子の中に褐色に変異した胞子を発見しました。そこから分離して純粋培養に成功したのです。
黒麹は胞子も真っ黒で布にも色がついてしまうのに対して、白麹は色が抜けている(とはいえ褐色ですが)ため扱いやすく、さらに香味も軽快になったとか。ここから白麹菌が焼酎用麹菌として一般的に使用されるようになります。
ただ、白麹や黒麹は黄麹と比べると、デンプンを分解して糖を生成する能力が低くなることも特徴として挙げられます。

最近注目?白麹の活躍

白麹について歴史からおさらいしましたが、ここからは最近注目される白麹の活用方法についてみてみましょう。

まずはなんといっても白麹が分泌するクエン酸は通常の清酒造りでは出せない成分なので、今までになかった酸味を取り入れることができます。

今までの歴史の中で日本酒は酸を出さないものが良いとされてきましたが、そこから現在では食の多様化の流れも受けながら甘酸っぱい味わいの日本酒も好まれるようになってきました。その観点で、白麹の特殊な性質を活かす酒蔵も多く出ています。

さらにクエン酸の利用は単なる味わいだけにとどまりません。
通常日本酒では、
酵母を培養する酒母という段階で酸性状況をつくり、雑菌の活動を抑制しながら、酸に耐性のある清酒酵母を純粋培養するという技術が使われます。
現在は約9割ほどが「速醸酛」といわれる醸造用の乳酸を添加して酸性状況をつくる方法で造られていますが、一部の蔵ではこだわりから醸造用乳酸を添加しない造りを行っているところもあります。
その場合は乳酸菌を活動させて酸性状況を造るのが一般的なのですが、手間がかかりリスクも伴います。
しかし白麹を使用して乳酸では無くクエン酸を利用して酸性状況を造ることで、比較的手間や時間もかからずに添加物を使用しない造りを実現することができるのです。

また芋焼酎ではライチや花のような良い香りが出ることがあります。実はこの香りの生成には白麹が大きく関わっているのです。

簡単に説明すると、さつまいもの中では香気成分と糖が結合した状態で保存されています。通常はこの香りは糖から遊離しないため感じられませんが、白麹や黒麹が生成する酵素がその結合を分解することで、華やかな香りが感じられるようになるのです。
これを応用すれば、さつまいも以外にも茶葉の酵素酸化にも活かせたり、他にも様々な植物の香りを引き出すにあたって有効な方法になるかもしれません。

さて、そんな白麹の魅力を楽しめるお酒がこちら。

白麹のクエン酸が爽やかな「THE CLASSIC」

カマルグ米、硬水、ワイン酵母で仕込んだ100%フランス産の清酒。透明感がありスッキリとしたキレの良さと、柑橘を感じる香りが特徴的な1本。和食やアジア料理と合わせたり、アペリティフとしてカルパッチョなどとの相性も抜群。 

すっきりとした飲み心地「三軒茶屋のどぶろく」

WAKAZEの創業の地である山形県産の米と、昔から水が豊富な地域である三軒茶屋の水を使用した三軒茶屋醸造所の定番商品のプレーンどぶろくです。
クエン酸をつくる白麹を使用することで程よい酸味が生まれ、すっきりとした飲み心地を実現しています。

めくるめく麹の魅力を、ぜひご体感ください。 

 

WAKAZE三軒茶屋醸造所 杜氏 戸田京介Text by TODA
WAKAZE三軒茶屋醸造所2代目杜氏。
埼玉県戸田市出身。名字と出身地が同じという稀有な人材。肩書の長さには自信がある。会うたびに髪が長くなっているとの噂があり、社内でも髪型の方向性がわからないという声が度々上がる。酒造履歴としては、三軒茶屋醸造所立ち上げ直後から蔵人として杜氏 今井翔也に師事。同年冬には千葉・木戸泉酒造と群馬・土田酒造にて修行し、翌年9月の今井渡仏にあわせて三軒茶屋醸造所での酒造業務を任される。2020年4月より、三軒茶屋醸造所杜氏として指揮をとる。

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